管理職になりたくない若者たち〜「割に合わない」の壁をどう越えるか?〜

「責任や業務量が増える割に、給与や報酬が見合わない」 「一言で言えば『割に合わない』ですよね……」 「上の管理職を見ても、いつも忙しそうで全く楽しそうに見えない……」

ビジネスの現場やコンサルティングの現場でも、若手社員からこのような声を本当によく耳にします。目の前の負担と報酬の計算だけで言えば、そう感じてしまうのも無理はありません。

しかし、多くの組織を見てきたなかで強く感じるのは、ここで管理職を敬遠してしまうのは、長い社会人人生においてあまりにももったいない!ということです。

なぜ若者は管理職を敬遠するのか。その構造的な背景を紐解きながら、会社、管理職、そして若手自身の「3つの立場」から、この問題を根本から解決する方法を考えていきましょう。

「割に合わない」の裏にある本当の損失

若者たちが言う「割に合わない」という比較の構図は、「責任や業務量」対「得られるお金」という、非常に狭い視野のモノサシの上に成り立っています。

ここに決定的に抜けているもの。それは、金銭面以外の最大の報酬である「成長」、とりわけ「人間的成長」という視点です。

人間的成長は綺麗事では得られません。大変な修羅場をくぐり抜け、板挟みを乗り越えた泥臭いプロセスを潜り抜けただからこそ、その人のなかに「人間的な余裕」や「ビジネスパーソンとしてのタフさ」が宿ります。

ここで、実際の経験から見える「2つのエピソード」をご紹介します。

【コラム】管理職を避けてきた人が、後になって気づくこと

エピソード1:ベテラン社員の後悔 昇進をずっと回避してきたベテラン社員や、遅めの昇進になった部長クラスの方々と話すと、多くがこう口にされます。 「どうせだったら、若い頃にもっと頑張って、早く管理職を経験しておけばよかった……」 ビジネスの荒波を越えて「大人」になって初めて、若い頃に成長のチャンスを自ら遠ざけていた本当の損失に気づくのです。

エピソード2:40年前、妻へのアドバイス 今から40年前、課長昇進の打診を受けた妻から「どうしよう」と相談されました。私は「仕事を辞めるのはいつでもできる。管理職になるチャンスは今後ないかもしれないから受けてみたら?」と答えました。 彼女はその後8年間課長を務めましたが、こう言っていました。 「本当に大変だったけれど、あのプレッシャーの中でしか身につかない決断力や人間的タフさは、後からお金を積んでも絶対に手に入らなかったわ」と。

組織を変える「シェアドリーダーシップ」と4つの実践

では、なぜ今の若者は「管理職になりたい」と思えないのでしょうか。それは若者の意識が低いのではなく、「今の管理職という役割の構造そのものが破綻しかけているから」に他なりません。

この問題を解決するには、【会社】【管理職】【部下】の3つの立場でアプローチを変える必要があります。

① 【会社として】 社会環境の変化によるプレッシャーの全てを課長一人に押し付けるのをやめる。部長が守備範囲を広げ、課長の負担を軽減する。そしてそれは単なる負担軽減ではなく、「部下に成長の機会を分けてあげること(シェア)」だと捉え直す。

② 【課長として】 「自分が全部やらなければ」という真面目さを手放し、課運営の指揮官から「設計者であり、ファシリテーター(支援者)」へと自分を定義し直す。メンバーに役割を分担することは、最高の「後継者育成」になります。

③ 【部下の立場で】 「割に合わなそうだから関係ない」と傍観者でいるのは、自分の成長のチャンスをドブに捨てているのと同じです。課長の目が届かなくなれば、一番損をするのは若手自身だからです。

ここで非常に重要になるのが、経営学で言われる「シェアドリーダーシップ(共有型リーダーシップ)」という概念です。

要するに、「リーダーシップとは、一人のスーパーマンが独占するものではなく、チームのメンバー全員が、状況に応じて代わる代わる発揮していくもの」だということです。小さな会社が「全員経営」を目指すように、これからの組織は、課や部の運営も「全員参加のマネジメント」へとシフトしていきます。

明日からできる!「課運営の役割分担」4つの具体例

「課長も部下も含めた全員で課運営をしていく」という「課運営の民主化」を進めるために、具体的に次のような役割を分担してみましょう。

  1. 「振り返り(KPTや振り返り会)」の運営とプロセスのファシリテーション
    • 内容: 月末やプロジェクト終了時の進行役をメンバーが持ち回りで担当する。
    • メリット: 課題抽出力や、チーム全体を客観的に見るメタ認知能力が身につく。
  2. 「ナレッジや情報のハブ(共有)」の仕組みづくり
    • 内容: セミナーでの学びや、生成AIなどの業務効率化ノウハウをチームに還元する情報シェアや社内wiki係を分担する。
    • メリット: 「チームに貢献している」という手応えが得られ、発信力や編集力が鍛えられる。
  3. 「他部署や他チームとの連携・窓口」の代理(リエゾン役)
    • 内容: 定期的な他部署との定例会や、プロジェクトごとのちょっとした連絡調整の窓口を一時的に引き受ける。
    • メリット: 組織全体や他部署との利害関係・全体最適の視点を若いうちから学べる。
  4. 「新メンバーや後輩のオンボーディング(受け入れ)」の設計
    • 内容: 初期オリエンテーションや業務手順の案内、最初のサポーター(バディ)の役割を分担する。
    • メリット: 「教える立場」を経験することで、マニュアル化やリーダーシップの基礎が圧倒的に早く身につく。

「課運営の民主化」で未来をアップデートしよう

「管理職になりたくない」という現代の風潮は、今の管理職の働き方が過酷すぎるという「組織の悲鳴」の表れです。

しかし、それを嘆くだけでなく、「課長をみんなで支え、みんなで運営するチーム」へとアップデートする絶好のチャンスと捉えてみませんか?

会社はチャンスを配分し、課長は設計者に変わり、部下は当事者として運営に参加する。この「課運営の民主化」のトレンドを、ブームとして後から追いかけるのではなく、今日から先取りして始めてみましょう。

※動画でより詳しくご覧になりたい方はこちら 本記事のテーマについて、さらに深掘りして解説しています!ぜひYouTube動画もあわせてご覧ください。
今野誠一の“組織のテレビ”「管理職になりたくない若者たち~「割に合わない」の壁をどう越えるか?~」

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